第3章 いくら儲けるのか

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  どこまで「できそう」?(生産能力)

 

  『ネイルアーティスト』が起業する場合を考えてみましょう。お客様に腕前を認めてもらえる人が仕事に必要な道具と材料を仕入れて準備します。チラシを作り、お友達に「安くでネイルアートをするけど、どうかしら?」と告知します。チラシを見たお友達が「いいわね!お願いします」と言えば商談が成立です。

自宅やお友達の家でお話をしながらネイルアートをして差し上げ、代金を回収すれば、商売は完結します。

 

  小さなビジネスの場合、何がビジネス規模の基準になるかと言えば自分の生産能力です。

 

  このネイルアーティストの場合で言えば月に何件ネイルアートの施術ができるのかを考える必要があります。ネイルアート1件の施術時間を2時間と考えた場合、営業時間10時間と考えるなら、最大で1日5人が限界です。22日営業では110人となります。『110人(件)に施術する』というのは実際のビジネスではありえない数字ですが、一度、算出しておきましょう。

 

  モノづくりの場合は1日に何個生産できるか。デザイナーさんであれば換算基準を決めて1日でどれくらいの作業が可能か、営業代行なら1日に何件訪問可能かなど、最大限動いてみた場合の生産能力を計算してみましょう。実はこの計算結果はあなたの「ビジネスの限界」を示すものなのです。

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いくらで売れると思う?(売値:単価)


  次に考えるのはあなたの商品・サービスが「いくら」で売るのか?です。

商品の販売価格は起業した人が決められます。物販の場合は「定価」があるものもありますが、サービス業などは特に定められた定価はありません。商売する人が値段(売値・単価)を決めることができます。

 

  いくらで売るのか?はとても重要な問題です。

 

  モノやサービスには世間一般的に見てみんなが妥当と考える値段「相場値」があります。もし商売する人が決めた単価「売値」が「相場値」より高ければ、当然、売れにくくなります。一般的な商品・サービスより高い価値を感じてもらえなければ売れていきません。逆に「相場値」より安ければ売れやすくなります。

 

  単価の内訳をみると「原価」と「経費」と利益に分かれます。

 

  原価とは物販の場合は『直接的な仕入値』のことだと考えてください。経費とは『販売するのにかかる費用』のことです。仮に売値が相場値よりも高いと儲けも多くなります。この利益がたくさん取れる状態を「付加価値の高いビジネス」という風にも呼びます。あまり売れていきませんが十分な利益が取れるとしたら商売として成り立つかもしれません。

 

   逆に売値を安くした場合、売値と原価の差があまりなければ儲かりにくいビジネスになります。たくさん売れたとしても利益は少ないかも知れません。売ろうとしている商品やサービスの価値(お客様が感じてくれている価値)が「相場値」と比べてどうなのかを見極めて売価を決める必要があります。

 

  さて、あなたの商売で「売れる単価」はいくらなのでしょうか?

どこまで稼げるかな?(売上と利益)

 


商売をしていく上で、覚えておいてほしい公式があります。


【売上の公式】
① 売上 = 販売件数(モノの場合は個数)× 単価
② 利益= 売上 - ( 材料費(原価) + 経費)

 

① の式でまず最初に計算してほしいのは、以下の式です。

測ってみたあなたの生産能力 × あなたの単価 = 最大の売上金額

 

  出てきた答えは用意した全ての商品・サービスが売り切れた時の最大の売上金額です。果たしてあなたにとって魅力的な金額になりましたか?「頑張って、稼ぐんだ!」という気持ちはとても尊いものですが頑張って売上られる金額の限界をまず知ることが大切です。

 

  ネイルアーティストさんの例で行けば月に110回が限界でした。仮に売値が5000円だとすると売上55万円が限界です。10時間のうちにほとんど休憩なく22日間フルに働き続けてこの売上です。まだ経費も原価も差し引いていません。

  この限界というべき最大の売り上げを知っておくだけでも無理な借金や無駄な経費を抑えられます。

 

② の式で計算してほしいのは、以下の式です。

① で計算した売上 - (仕入れた原価+経費) = 利益

※経費は事務所の家賃や交通費や、仕事にかかる通信費などです。


  この式で出てきた答え(利益)は一旦、あなたが手にできるお金です。一旦というのは「儲かっている」と、この中から税金も払わなければなりません。もし、お金を借りていたらこの利益の中から「返済しなければなりません」ので全部、自分で好き勝手に使えるお金ではありませんので注意が必要です。

 

  商売をしていると想像する以上に経費が掛かります。原価のこと(仕入れ値がいくらか)は理解しやすいのですが、経費のことは忘れがちです。1ヶ月営業してみて、締めてみたら経費オーバーで利益が出ていない。

というのは、とてもよくあることです。

 

  さて、あなたはいくら給料を取りますか?


  お気づきだと思いますが、あなたの給料もこの利益の中から取らなければなりません。給料も「経費・原価」なのです。いくらがいいでしょうか? まずは生活費として必要な金額を考えて下さい。儲かってきたら昇給させるとして取りあえずは商売が安定するまで必要な額で我慢しましょう。

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利益を得るためにどれくらいのお客様が必要なのか?

 

  単純に売価が1万円。原価(仕入値)が6000円の商売で考えてみましょう。

 

  単価1万円 × 原価6000円 = 利益4000円 が計算の前提条件です。

  1個売れば4000円の利益が出る商売と考えてください。

 

  仮に10万円の経費を賄うためにはどれだけの個数を売らなければならないでしょうか?

 

  計算式は   10万円(経費)÷4000円(1商品当たりの利益)=25個

 

  つまり、25個売って初めて10万円の経費を賄えることになります。では自分の給料20万円分を上乗せしたとしたら、どうなるでしょうか?

 

  計算式は   30万円(経費と自分の給料)÷4000円(1商品当たりの利益)=75個

 

  75個の商品を売って自分の給与がまかなえるようになるということです。75個ですから売上金額としては75万円ということになります。
  75個を販売して30万円の粗利が出たわけですが、この(売上から原価と経費をさしい引いた)利益(粗利と言います)からはまだ「税金」を払ったり、「目に見えていない費用」を支払ったりする可能性がありますので実質的にはより多くの個数を販売しなければなりません。

 

  もしかしたら計算上、生産能力で計算した「ビジネスの限界件数」よりもたくさん販売しなければ『利益が出ない』かもしれませんが、ここでの計算はまだ机上プランですから悲観しないでください。商売のカタチから得られる収益を計算してみる(シミュレーションしてみる)ことで、まずは大まかな構造をチェックするのが目的です。


  計算上、うまく利益が出ないときは『生産能力・単価設定』に無理がありますので商売のカタチを見直すところからやり直します。『原価や経費』の見直しも図ってください。原価や経費できるだけ抑える事です。ただ、原価は商品の品質に直結しますので、プロとしてのこだわりを持って『一定レベル以上の品質を保てる製品』を重視して選んでください。

 

  「商売はやってみないとわからない」点がたくさんありますが、まずは自分の商売をプランニングをしてみましょう。自分の商売の限界を知り、適切な単価を設定し、赤字の出ない無理のない販売構造を作る。こうした大まかなガイドラインを組み立てていけば、少なくとも無謀な独立をしなくて済みます。